動物虐待防止会 設立趣意書(1902年) 現代語訳

わが国の動物愛護運動の始まりは、1902年(明治35年)に動物虐待防止会が誕生してからだと言われています。

 

幹事役は中央大学教授でクリスチャンの広井辰太郞。主に日本人男性の知識層で構成されていました。

 

主な活動は、出版物の発行や演説会の開催、行政への陳情、議会への請願要望、警察への告発などでした。

 

114年も前の文章ですが、今読んでも新鮮で、感銘を受けます。

 

現代語訳を皆様にお目にかけたく、ここに掲載致します。

 

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動物虐待防止会 設立主意書 (1902年)

 

 

言うまでもなく、動物の虐待は、一つの重要な人道的社会問題であり、その社会各方面に及ぼす影響は深く大きいものがあります。仮にも人道の開発に関心を持ち、社会の公益を志す者であれば、決して軽んじることはできません。

 

 

一、罪の無い可憐な無告動物をむやみに虐待斬殺して何の苦痛も感じないのは、果たしてこれは人間に与えられた当然の権利でしょうか。他の動物に対して残忍酷薄な扱いをすることは、やがて人類に対する残忍酷薄な扱いに繋がることは無いのでしょうか。他の動物に対する親切と、人間相互に対する親切とは、その心情において何の違いもありません。動物のような、苦痛を訴える術を持たない弱者を苦しめて得意になっているような状態は、未開国民の野蛮な風習であり、断じて文明国民の行いではありません。動物虐待の防止は、まさに人道の問題です。

 

二、我が国では現在、至る所で動物の虐待が白昼公衆の面前で行われているため、児童青年を初め成人に到るまで、社会全体では知らず知らずのうちに残忍非道の蛮行に慣れてしまい、優美高尚な天賦の品性をどれだけ傷つけているか計り知れません。動物虐待の防止は、実に教育上の問題です。

 

三、幼くて、まだ物事の道理が分からない児童が動物を虐待するとき、その初めには悪意は有るはずがありません。しかし、動物虐待を繰り返すことが多くなると、本能的な傾向は意識的な悪意となって現れ、殺人という大罪を犯すことに繋がります。人を殺すことと他の動物を殺すこととは、その精神状態において何等異なることは無いからです。従って、残忍殺伐な気風に染め、犯罪の素因となる動物の虐待を防止することは、まさに法律上の問題です。

 

四、さらに現実的な利害に関する問題としても、家畜運搬法、屠場制度等が不十分であるため、私達が栄養物として用いる肉類や乳液にも悪影響を与え、人類社会の健康を害するという点でも実に大きな問題があります。

また、樹間に戯れ、青空に舞う可憐で有益な野鳥を乱獲することにより、農産物にも影響を及ぼすことも無視できません。動物虐待の防止は、実に衛生上、経済上、農政上、また審美上の問題です。要するに動物の虐待は、人類の品格を破るものであり、文明の対面を汚すものです。国民の幸福を妨げるものであり、社会の美観を損なうものです。同志と共に、ここに本会を設立する趣旨は、無罪可憐な無告動物に対する僅かばかりの同情から始まったものではありますが、この活動を通じて社会人情の根本的な改善を計り、ひいては健全、優美、高尚な大国民の気風を養成しようとするものであります。

 

  規約

 

一、本会を動物虐待防止会と称する。

一、本会は、博愛の精神と人道擁護の主義に基づき、動物虐待の非行を防止することを目的とする。

一、本会は、演説、出版、建議、勧告などにより、その目的を達成しようとするものである。

一、本会は、仮に東京芝区高輪北町五十三番地(広井辰太郎宅)にその本部を設置する。

一、本会の趣意に賛成し、自ら活動を行い、他者を勧誘しようとする者は、誰でも入会することができる。

一、本会の事務を処理するため、幹事三名、評議員若干名を置く。

一、本会の費用は、会員及び篤志家の寄付によって賄うものとする。

一、本会は、時々に雑誌新聞などを通じて、新入会者、寄付者及び本会の会計を報告する。

一、入会希望者は、その住所、氏名、職業等を明記し、本部又は評議員の一人に申し込むこと。

一、本会は、毎月十五日に例会を開き、毎年四月及び十月に総会を開く。

 

 

    (現代語訳 みやざき市民オンブズマン 野中 龍彦)

 

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この動物虐待防止会の誕生から12年後に、新たな会「日本人道会」が発足します。その構成メンバーには、新渡戸稲造夫人メアリーやバーネット夫人など、在留欧米人の女性が多かったようで、積極的な活動を展開し、動物保護活動は盛り上がりを見せました。(牛馬用水槽の設置や動物愛護写真展、犬猫保護の民間シェルター「慈悲園」の建設(鎌倉)、犬の抑留所の環境改善、野犬撲殺廃止の呼び掛けなど。)

 

しかし、1938年にメアリー夫人が没し、翌年から反英米運動が激しくなり、「動物愛護」は「軍馬愛護」にすり替わり、日本は戦禍に巻き込まれていったのです。

 

戦前の運動を担った2つの会は、やがて統合され、組織的な活動は次第になくなり、やがて1958年に幕を閉じました。

 

      (参考文献:「犬の現代史」今川勲著 厳談書館)

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翻訳協力

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